らいぶにっき

行ったライブの備忘録です。記憶を辿って書いてるので内容は正確ではないです。

2019.03.16 Alternative Tokyo@渋谷WWW/WWWX

フェスというものをどこか敬遠してしまうところがある。自分にとってライブは普段聞いている音楽を生で楽しむ場所という意味合いが強く、知らないアーティストの知らない曲をいきなり聴かされても正直困ってしまうのだ。昨年友人と行ったBAYCAMP神聖かまってちゃん大森靖子サニーデイ・サービスなど好きなアーティストが多く出ており非常に楽しかったが、見たいアーティストには友達を連れ回し、興味のない深夜の時間帯には疲れ果てて一人キャンプエリアで寝るという我儘を通してしまった。ただ今回は大好きな折坂悠太と、普段から曲を聴く曽我部さん、カネコアヤノ 、トリプルファイヤーが出るとあって参戦の意思は固かった。前回の教訓を活かして好きに回っても誰にも迷惑をかけないように一人で行くことにしたが。

大好きなアーティストの場合は開場時間ぴったりに着いて、整理番号が呼ばれるのを待ってなるべく早く入って、良い場所で見たい、と欲が働きまくるが、今日のような場合は顔が少し見えるくらいの位置で見られればいいや、と心に余裕がある。こういったガツガツしすぎないでさらっと楽しむ余裕が実は大事な気がしていて、これがフェスならではの楽しみ方なのかもしれないなと思う。開場から30分程経った頃にWWWに到着。リストバンドを付けて中に入るとエスニック系の香辛料の香りがする。ライブハウスのフードは美味しそうだけど一人の時にはあまり食べようという気にならない。

 

◼︎カネコアヤノ 

TLや雑誌などで名前をよく見かけ、昨年の終わりにSportifyで「祝祭」をダウンロードして聴いていたがライブを観るのは初めて。家の近くにある古書店を彼女のマネージャーが営んでいるとか、挫・人間の下川君の後輩?であるといった前情報もあって、いつかライブを見たいと思っていたので機会に恵まれたのはよかった。

最初の曲は「ごあいさつ」。正直、後に載せているセットリストを見るまで曲の名前は知らなかったが「祝祭」で聴き覚えのある曲。そして意外なのは感情の表現が自分が想像していた以上に豊かであること。カネコアヤノの声はJITTERIN'JINNに似ているなーというのが音源を聴いていての印象で、あっさりとサラリと歌うイメージがあったが、表情や歌い方を見ていると「情念系」という言葉の方がしっくりくる気がする。この雰囲気はとても好きだ。

また先にも書いたように普段の自分は聞き込んでいない知らない曲はあまり楽しめないのだが、カネコアヤノの場合は違った。特に「天使とスーパーカー」という曲は会場の空気を一気に変えるパワーがあって自然と身体がリズムを取ってしまう。この曲と似た雰囲気で演った「恋しい日々」も音源とはまた違う荒々しさがあって良かった。そしてこれは折坂悠太も同じだが、この人の声は、歌っているというより「楽器を奏でている」という表現が当てはまる気がする。言葉よりもまず心地の良い音として耳に入ってきて身体がスッと受け入れる感じがあるのだ。そして個人的に一番感動したのが「エメラルド」。フワフワとした優しい雰囲気とそれにぴったりの笑顔が最高で、多幸感に包まれた。

 

詳細なセットリストはTwitterに上げている方がいたので拝借させて頂きます。こうしてあげてくれる人がいるのは本当にありがたいなと思う。

 

◼︎折坂悠太

心の余裕が大事と書いたのに、好きなアーティストとなるとやはりガツガツしてしまい、裏のトリプルファイヤーを観るのを諦めて最前列で待機する。ただ、こうやって柔軟に動けば良い場所が確保できるのもフェスのいいところだ。(書いていて思ったがこれは全く柔軟な動き方ではない)。

暫くするとリハーサルが始まり折坂さんが出てくる。リハというのは面白いもので、最前列で見るほど楽しみにしているはずの人が目の前にいるのに、自分を含め観客みんなが何となく素知らぬ素振りをしている。こういうところに日本人の良さがあるのかも知れないが。ただ「風になりたい」を歌い出すと流石に知らんぷりに限界がきて聴き入ってしまう。更に次の「暗闇坂むささび変化」では、そんな心を見透かすように歌詞を即興で変えてこちらに語りかけてくる。「裏ではどなたがやるんでしょうか〜きっと素敵なアクトだと思うが、どうかそのままそこにいて帰らないで〜」といったような内容で笑いが起きる。

一度はけてから改めて本番。今日の折坂さんはいつもとは違いコートを着ている。そして一曲目は「揺れる」。この曲を聴くと、忘れていた色々なことを思い出す。折坂さんと同じくそもそも平成生まれの自分にはまだあまり実感が湧かないが、もう暫くすると「平成」という時に起きたことは全て、一つ前の時代の過去の話になっていくのだろうか、などと考える。

そして次は神保町視聴室でも聞いた新曲。「握る手の温かさ」というようなフレーズから始まったかと思う。素敵で印象的なメロディの部分があっていつかされるであろう音源のリリースが楽しみ。歌詞もじっくりと読みたい。

イ・ランさんがMCで折坂さんからメールが返ってこないという話をしたらしいのだが、その頃は鬱の期間でメールの返信が滞ってしまっていたとのこと。散らかっていた部屋を綺麗にしたら調子が戻ったが、今はまた沈んでいるらしい。自分もたまに鬱になるが本当に原因がよく分からず、駄目なのは分かっているのにどうにもならず焦燥していってしまう。でもそんな日々の中でも作曲活動を続けてくれるのはありがたいなと思う。

「平成」では今日の日付や渋谷の情景を歌詞に合わせて口上のように歌い上げる。そしてたぶん自分は平成の世でこの曲を生で聴くのが最後だということに気付き、一つの時代の終わりを改めて思い知らされる。「幸皆様に多くあれ」という言葉が嬉しかった。

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後に予定が控えていたので結局きちんと観られたのはこの二人だけだったが満足度はとても高かった。そして帰りに物販を覗いたらトリプルファイヤーの吉田くんが当然のように座ってグッズを売っている。そもそもライブを見てないし話しかけるのもなんか違うのでスルーしたが、こういう非日常的な体験が溢れているからライブって素晴らしいなと思うのである。